Room Acoustics

「ルーム・アコースティックス(他にルーム・コレクション、ルーム・キャリブレーション等を呼する製品もある)」は、リスニング空間の音響特性を最適化する技術または手法。

旧来、電気的にはパラメトリックイコライザー等で「周波数特性ーレベル特性」を整えたりするのがせいぜいで、部屋の音響特性の改善については吸音材や反射材等の物理的手法でしか対応できなかった領域だが、現在ではPC音源を活用し純デジタル(≒ソフトウェア)領域で実現するソリューション(※)がある。欧米を中心にプロスタジオやDAW環境での採用も増えているが、ピュアオーディオシステムで使っている人は少ないようだ。

私が使っているのは Sonarworks 社の SoundID Reference。このソリューションの最大の魅力は、既存のDACやアナログアンプ、スピーカーをそのまま生かせる点だ。(他社製ソリューションでは専用のスピーカー使用が前提だったりする)

(詳細は割愛するが)基本的には、特殊な信号パターンをPCを音源としたオーディオシステムで再生し、それを基準マイクで計測することで音響空間の状態を正確に解析、ネガティヴな部分を補正するデジタルフィルターを自動生成して「Virtual Audio Device」という形でOS上に常駐させることで、そのPCで再生されるすべての音源に補正を適用することができる、というもの。

そして SoundID Reference では、一般的な周波数特性のみならず、なんと位相特性まで補正出来てしまう。位相補正は信号遅延が大きくなるため動画再生には向かない(リップシンク問題が生じるため)が音質面で圧倒的なメリットがある。私は初めてフラットな位相体験をして以降「ああ、こりゃ二度と後戻りできないな」と思った。

参考までに現居での計測結果&補正状態を示す。(UIのキャプチャー)

Before


After

現環境では400Hz付近が凹んでいるのが分かる。これはスピーカーの特性(恐らくクロスオーバーネットワーク絡み)によるものと思われる。左右でも異なる、こんな複雑な特性でも完全に(しかも自動で)フラットに補正できてしまう。

計測が終わり、自動生成された補正フィルターをプリセットしてしまえば、後は音を聴きながらUI右下のボタンで Enable/Disable を瞬時に切替えながら聴き比べできる。補正の効果は歴然なのでDisableにする気にはならない。

※補正は純デジタル領域で行われるが、デジタル領域でのレベル調整には「ビット落ち問題」があるので補正量は少ないに越したことはない。故に、旧来の物理的手法によるルーム・アコースティックスの特性改善アプローチは、このソリューションを用いている環境においても有効な手段であることに変わりはない。

 

・・・ということで、新居でのオーディオシステムは、 SoundID Reference による「ルーム・アコースティックス」によりセットアップを完了した。